ZuoraはBill Runを起点に、BCDとCharge Trigger Dayのルールに従って請求書を自動生成します。InvoiceのLifecycleを理解し、Prorationの日割り計算、Usage請求、調整(Credit / Debit Memo)まで把握することで、企業の請求業務全体を設計できるようになります。
Bill Runが実行されると、BCDに一致するアカウントの請求書が自動生成されます。請求の流れを「実行 → 生成 → 確定 → 回収」という4ステップで把握しておきましょう。
Zuoraの請求業務は以下の流れで進みます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| Bill Run実行 | 毎日定期バッチ(または手動Ad Hoc)で実行される |
| Invoice生成 | BCDに該当するアカウントのInvoice(Draft)が作成される |
| Invoice確定 | 担当者またはシステムがInvoiceをPostする |
| Payment回収 | 自動決済またはPayment運用でアカウントから回収する |
「誰をいつ請求するか」はSubscriptionのBCD(Bill Cycle Day)とRate Plan ChargeのCharge Trigger Dayで決まります。この2つのオブジェクトの役割を正確に理解することが、Bill Run設計の出発点です。
Zuoraの請求に関わるオブジェクトは以下の階層で管理されています。
| オブジェクト | 設定する内容 | 例 |
|---|---|---|
| Account | 顧客情報・支払い方法 | 請求先会社名、クレジットカード |
| Subscription(BCD) | 毎月何日に請求するか | BCD=1 → 毎月1日に請求 |
| Rate Plan Charge(Trigger) | チャージをいつ開始するか | Contract Effective Date など |
| Trigger | 開始タイミング | 使いどころ |
|---|---|---|
| Contract Effective Date | 契約締結日 | 契約と同時に課金を開始したい場合 |
| Service Activation Date | サービス開通日 | 実際にサービスが使える状態になった日から課金したい場合 |
| Customer Acceptance Date | 顧客検収日 | 顧客が受け入れを確認した日から課金したい場合 |
| 方式 | 説明 | 使いどころ |
|---|---|---|
| Scheduled(定期バッチ) | 毎日夜間に自動実行 | 通常運用 |
| Ad Hoc | 担当者が手動で実行 | 解約時の最終請求、テスト実行など |
| キャンセル可能な状態 | 内容 |
|---|---|
| Pending(保留中) | まだ実行されていないBill Run |
| 完了済み・Posted Invoiceなし | 実行は完了したが、まだ一件もInvoiceがPostされていない |
Bill Runは毎日自動実行されますが、すべてのアカウントのInvoiceが毎日作成されるわけではありません。Target Date(通常は当日)を基準に、BCDが一致するアカウントだけを対象にInvoiceを生成します。
InvoiceはDraftとして生成され、Postすることで会計上の確定書類になります。PostされたInvoiceは直接編集できないため、修正はCredit MemoまたはDebit Memoで行います。この設計は会計監査証跡を守るための業界標準です。
| ステータス | 説明 |
|---|---|
| Draft | 作成直後。編集・削除が可能 |
| Posted | 確定済み。変更・削除不可。会計帳簿に計上される |
| Cancelled | キャンセル済み。PostされたInvoiceをCancelするとCredit Memoが自動生成される |
Zuoraでは「PostされたInvoiceは変更しない」というビジネス原則に従っています。これは企業会計の監査証跡(Audit Trail)の要件に起因します。一度確定した請求書を後から修正すると、会計記録の信頼性が損なわれるためです。
Bill Runの後、InvoiceをDraftのままにするか自動でPostするかはBilling Settingsで制御できます。
| 設定 | 動作 | 適したケース |
|---|---|---|
| Automatic Post | Bill Run完了と同時にInvoiceをPostedにする | 確認フロー不要、大量請求を自動化したい場合 |
| Manual Post | InvoiceはDraftで生成され、担当者が個別にPostする | 請求内容を目視確認したい場合、例外処理が多い場合 |
InvoiceはSubscriptionの課金明細をInvoice Itemとして一覧で持ちます。1つのInvoiceに複数のInvoice Itemが含まれることが一般的です。
| Invoice Item | 内容 |
|---|---|
| Charge Item | Rate Plan Chargeごとの請求明細(月額費用・従量費用など) |
| Tax Item | 税額(Tax Integrationを使用している場合) |
| Discount Item | 割引チャージが適用された場合の明細 |
通常のInvoiceはSubscriptionのBill Runから生成されますが、Standalone Invoiceを使うと、Subscriptionに紐づかない単独の請求書を手動で発行できます。
| 用途 | 例 |
|---|---|
| 単発の費用請求 | コンサルティング費、初期設定費 |
| Flat Fee型の一回請求 | ハードウェア販売、ライセンス一括払い |
SubscriptionをBCDの途中で変更すると、Zuoraは変更前後の差分を日割りで計算してInvoiceに反映します。Prorationは「公平な課金」を自動化するZuoraの中核機能の一つです。
Prorationとは、請求期間の途中で料金が変わった場合に、残り日数に応じて料金を按分する仕組みです。たとえば月額3,000円のプランに月の途中から加入した場合、加入日から月末までの日数分だけを請求します。
月額 3,000円 / 31日 × 残り20日 = 1,935円(Prorated金額)
| 操作 | Prorationの内容 |
|---|---|
| 月途中でSubscriptionを新規作成 | 初回請求は残り日数分の日割り額になる |
| 月途中でUpgrade(プランアップ) | 差額の日割りがDebit Memo相当の追加請求になる |
| 月途中でDowngrade(プランダウン) | 過払い分の日割りがCredit Memoとして返金される |
| 月途中でSubscriptionをCancel | 残り期間分がCredit Memoとして生成される(Refund Policy設定に依存) |
Rate Plan ChargeにはProrationを有効にするかどうかの設定があります。
| 設定 | 動作 |
|---|---|
| Proration ON(デフォルト) | 月途中の変更を日割りで計算し、InvoiceまたはMemoに反映 |
| Proration OFF | 月途中の変更があっても、次のBCDまで現行料金で請求される |
Zuoraには2つのProrationモードがあります。試験ではどちらが「日単位」かを問われることがあります。
| モード | 計算単位 | 特徴 |
|---|---|---|
| Full Proration(日割り) | 日単位 | 変更日から月末までの実日数で按分。最も一般的。 |
| No Proration | なし | Proration計算を行わない。ChargeレベルでProration OFFと同義。 |
UsageチャージはZuoraへデータをロードしてから請求される、後払い専用のチャージです。「実際に使った分だけ請求する」というシンプルな原則を、Zuoraはそのまま実装しています。
Zuoraには3つのチャージタイプがあります。
| チャージタイプ | 請求タイミング | 例 |
|---|---|---|
| Recurring | 定期的に自動生成(前払い・後払い両対応) | 月額サブスクリプション料金 |
| One-time | Subscription作成時または手動 | 初期設定費、ライセンス費 |
| Usage | 使用量データをロードしてから | API呼び出し回数、ストレージGB、通話分数 |
UsageチャージはRecurringやOne-timeと異なり、使用量の実績データがZuoraに存在してはじめて請求額が確定します。そのため、必ず**後払い(arrears)**になります。
ZuoraにUsageデータを登録する方法は2つだけです。
| 方法 | 向いているケース |
|---|---|
| CSV/Excelアップロード | 月次バッチなど、定期的に一括でデータを投入する場合 |
| API(Usage API) | システムから都度リアルタイムで使用量を連携する場合 |
データをロードする際は、accountNumber・subscriptionNumber・chargeNumber・startDateTime・endDateTime・quantity を正確に指定する必要があります。
通常のBill Runは毎日夜間バッチで実行されますが、使用量データをロードした翌日のBill Runまで待てないケースもあります。たとえば、解約後すぐに最後の使用量を請求したい場合などです。
Zuoraでは、使用量データをロードした後にOn Demand Bill Runを実行することで、通常のBCDサイクルを待たずに請求書を発行できます。
| Recurring(In Arrears) | Usage | |
|---|---|---|
| 請求額の決まり方 | 料金プランで固定(例:月額100ドル) | 実際の使用量 × 単価で計算 |
| データロードの要否 | 不要(自動) | 必要(手動またはAPI) |
| 請求タイミング | BCDに従い自動 | データロード後の次のBill Run |
| 「後払い」の意味 | 当月サービス提供後に翌月請求 | 使用量データを受け取ってから請求 |
Invoiceを発行した後に金額を修正したいとき、Zuoraは元のInvoiceを直接書き換えません。Credit MemoとDebit Memoという専用オブジェクトで差分を記録し、会計上の正確な証跡を残します。
PostedになったInvoiceは直接編集できません。理由は監査証跡(Audit Trail)の保全です。企業会計では「一度確定した請求書は変更してはならない」という原則があり、Zuoraはこれを設計に反映しています。
| オブジェクト | 用途 | 方向 |
|---|---|---|
| Credit Memo | 顧客への返金・減額 | Zuora → 顧客(マイナス調整) |
| Debit Memo | 顧客への追加請求 | 顧客 → Zuora(プラス調整) |
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 過請求の修正 | 料金プランの誤設定で高く請求してしまった |
| 解約返金(Refund) | 解約時に残期間分を払い戻す |
| サービス障害補償 | SLA違反に対するサービスクレジット付与 |
| Invoice Cancel | InvoiceをCancelすると自動でCredit Memoが生成される |
| Write-off(不良債権償却) | 回収不能な残高を貸倒処理する際にCredit Memoを活用 |
Credit Memoは発行しただけでは現金の動きになりません。以下の2つの使い道があります。
| 使い道 | 説明 |
|---|---|
| 次のInvoiceに充当(Apply) | 翌月請求書からCredit Memo残高を差し引く |
| Refund(返金) | 銀行振込などで現金を顧客に戻す |
充当していない残高は「Unapplied Credit Memo Balance」として顧客のAccountに残り続けます。
| ステップ | 操作 |
|---|---|
| 1. Credit Memoを確認 | UnappliedなCredit Memoが対象アカウントに存在することを確認 |
| 2. Refundを作成 | Credit MemoからRefundを生成。金額・Payment Methodを指定 |
| 3. Gateway処理 | ElectronicはPayment Gateway経由で自動処理、ExternalはZuora外で手動処理 |
| 4. Refund確定 | RefundステータスがProcessedになれば完了 |
| 設定 | 動作 |
|---|---|
| Auto-Apply ON | Bill Run実行後、対象アカウントの未充当Credit Memo残高が新しいInvoiceに自動で差し引かれる |
| Auto-Apply OFF | 担当者が手動でCredit MemoをInvoiceに充当する必要がある |
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